普仏戦争(1870~71年)で活躍したプロイセンの三角包帯

 三角包帯というものをご存知でしょうか?最新の資材が揃う医療現場では見ることが少なくなりましたが、腕の骨折の時など、重いギブスをつけた腕を吊る三角巾のことです。
 三角包帯は、止血、圧迫止血、包帯、ギブスの保持、副木を固定、腕を吊るなどの応急手当ができる、多機能を持つ万能包帯です。現在でも、看護学校や、救急救命士の課程教育では使用法の教育があります。
 この三角包帯の我が国におけるルーツは、明治のはじめに陸軍の石黒忠悳(ただのり)一等軍医正(中佐相当官)が、横浜のハルトリー商会から輸入した医療品の一つだと思われます。当時のプロイセン(ドイツ)は、普仏戦争に勝利した最新の医学情報を持つ国で、陸軍が軍事面でも医学面でお手本としていました。
 この三角包帯はドイツの軍医エスマルクの考案と言われています。三角包帯には使用例のイラストが直接印刷されています。使用法のマニュアルが付属しています。
 石黒は、明治6(1873)年にイラスト入りの三角包帯を国産化し、翌年には『三角包帯用法』を発行しています。
 『三角包帯用法』(靖國神社偕行文庫所蔵)によれば、「普段から兵隊同士がこの本で勉強しておけば、いざという時に軍医が不足する場合には、兵隊同士で応急手当が出来る」と記述があります。救急法の教則のルーツとも言えます。
 春の企画展「一刻も早く!」及び「Pre企画展」では、戦傷病者の応急手当に必要な、各種包帯法資料の展示もあります。
皆様のご来館をお待ちしております。

【小景(しょうけい)第17号】

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2015年