ホーム/ 企画展/ 夏の企画展「戦傷病者を支えた女性たち」
企画展

従軍看護婦と戦傷病者の妻の体験記

 

従軍看護婦の体験記
 従軍看護婦の中には自身の体験を書籍にまとめ、戦地での救護・看護の様子を克明に伝えた方がおられます。慣れない土地の気候風土、敵軍からの攻撃、人員不足による連続勤務など、厳しい環境での救護活動には大変な労苦がありました。

『従軍看護婦』

……「看護婦さん、足の方に何か入れて高くして下さいませんか」といはれた時、如何にしても「足は切断してあります」とは申し上げられない。
「そうですか、何か入れて上げませう」と毛布を巻いて、高くしました。
「如何ですか」とお尋ねしたら「楽になりました」とおつしゃつた。
何れ切断の足はわかるのに何故嘘を言つたか、幾ら同情でも帝国軍人を誤魔化した事は、負傷されて苦痛の上に更に神経を興奮される様な事があつては非看護婦だ。
足の一本位失つた事に嘆くと思つているのか、帝国軍人をそんな者と思つているのか。
片足位は何のその国を後にした時から命はないものと思つているのにと、お怒りになりはせぬかと次から次へと心痛不安でたへられない。
どうしてあの時軽く言つてしまふ勇気がなかつたのかと気になつてたまらない。……

展示資料:『従軍看護婦』(1941年)
病院の看護に何年も従事してきた著者が、自身の看護体験をまとめたもの。上海の野戦病院に勤務していた時の状況や、患者とのさまざまな思い出を記している。

 

戦傷病者の妻の体験記
 戦傷病者の妻の中にも自身が体験したさまざまな労苦を体験記に記した方がおられます。夫に代わって働きに行かなくてはならなかったこと、周囲からは自身の境遇が理解されず、言われなき差別を受けたり、偏見を持たれるなど大変なる労苦がありました。

:『戦傷病克服体験記録』

……結婚した頃は、「体の不自由のない先生がどうしてあんな不自由な傷痍軍人さんと結婚されたのか分かりません」とか、「傷痍軍人の恩給がもらえるから、少々身体が不自由でもお金の為に我慢をしておられるのでしょう」などと陰口をいろいろいわれました。他人からいやなことをいわれたり、恥ずかしい思いもしましたが、夫の強い精神力と心の正しい優しい人柄を心から尊敬して結婚したのですから、傷痍軍人の妻であることを誇りに思っています。……

展示資料:『戦傷病克服体験記録』(2000年)
戦傷病者とその妻から寄せられた戦中・戦後の労苦をまとめた体験記。

無断転載はご遠慮下さい。